KIRICO*KILICO 吉田順子さんの工房へ

こんにちは。メトロクス、ヨダです。

今年始まってすぐに、吉田順子さんの工房に伺ってきました。
実は、私にとっては今回が初めての訪問で、制作工程を拝見出来るというので
すごく楽しみにしておりました。

途中、バスで降りるべき駅を逃し、バス停でお待ち頂いていた吉田さんを通り越すという
お恥ずかしい場面もありましたが、無事到着。

大きな窓から光が差し込む、明るい工房でした。
正面奥がグラインダー、右手に割り出し機が配置されています。

今回制作工程を見せて頂くのは、「Vオールド ひしと縦線」です。
まず行うのは「割り出し」。
模様をどの位置にいれるのかを、割り出し機を使って印をつけていきます。

それがこの割り出し機。切子の制作には欠かせない道具です。

吉田さんは多くの小さな型紙を持っていらっしゃいます。
これは各模様にひとつづつ。これでまず印をつけて、
ガラスの生地を回して均等に線を引いていきます。

ペンを持って器を回転させて真っ直ぐな線を書いていくのです。

ちなみに型紙はもう一つあって、「花と実」のように割り出しを行わない模様には
この型紙で基本的な模様を写し取ります。

さて、こちらは割り出しが終わった生地。

次はグラインダーに作業を移し、ガラスを切っていく工程に入ります。

丸い刃を機械に設置し、回転させて模様を彫るのです。
(ちなみに写真のものは、刃ではなくガラスをみがくときに使うものです)
この時に是非お伝えしたいのが、この刃(グラインダー)の種類の多さ。
箱に入っているのが大小さまざまなグラインダーです。

これを模様や用途に合わせて一作業づつ替えていくのです。

今回はまず、細い刃で「縦線」を彫ります。
そのためにグラインダーをセッティング。

そして切っていきます。

吉田さんが作業すると簡単にきれいな縦線が生れていきますが、
回転する刃にあてるときの角度、押し当てる力の強さ、など想像するに
大変高い技術で行われている事が実感として湧いてきました。

線部分の仕上がり。

その後、グラインダーを取り替えます。
今度はさっきより太くて目が粗いもの。これでひし模様をつけていくのです。

グリーンの方が完成品です。細いひし模様が出来上がりました。

ここで、再度グラインダーを変更。
ひしを仕上げるために、より目の細かい刃できめの細かい質感できれいに仕上げます。

先ほどの細いひしを大きくしていきます。

その際に、吉田さんに説明していただいたのは、仕上げのひしの曲線のこと。

ブルーナのライオンのメモに描かれた三つのひし。
この、仕上げの作業で、作家さんによってどんなひしにもなりえるとのこと。
吉田さんのひしはすこしふっくらしたもので、特有のもの。
こういう細かなところに、吉田さんならではの線や形が合わさって、
KIRICO*KILICOが生まれているのです。

さて、模様が完成したところで、次は磨きの作業にかかります。
…と吉田さんに見せて頂いたのは粗縄!

これを何に使っているかというと…

これです。このちいさな藁の束になるのです。
この作業ではグラインダーをバッファーと呼ばれる仕上げのパーツに付け替え、
こちらを回転させて切子を磨きます。

藁の束は、バッファーに磨き粉をつけるためのもの。
中がストロー上になっているので磨き粉をよく吸うのだそうです。
伝統的に切子職人たちはこれを使っているとのことでした。

そしてぴかぴかに!
ここからさらに水洗いで仕上げ、完成となります。

一つの模様を完成するのに何度もグラインダーを代え、また磨き、
その工程の細かさに驚きました。
「模様を彫る」ことだけではない様々な手順を経て、
私たちの手元に届いているのですね。

そして、お邪魔をしたのに吉田さん手作りの甘酒までご馳走になってしまいました。
クローバーの切子に甘酒!

すてきです。しょうがの味でとても温まりました。

ちなみに吉田さんには長大作さんの木製トレイを使って頂いております。
以前ご来店されたときにご購入頂いたのでした。

もうすぐ、吉田さんの展示会用の作品が
メトロクスにやってきます。
なかなかお目にかかれない作品も来る予定なので、とても楽しみです。

吉田さんは、「使う 飾る ガラスの器」展の初日に在廊されますので、
是非作品について、お話いただければと思います!

tokyo@metrocs.jp|TEL 03-5777-5866